なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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【今月のお題】サマーキャンプ

 子どもの頃、毎年のように参加していたキャンプには、忘れられない夏の思い出がたくさん詰まっている。その中でもよく覚えているのは、小学生の頃、家族と離れて一人で初めて参加したキャンプだ。参加している子ども達、大学生のカウンセラーさん達、監督役の数名の大人達とはほぼ初対面なのに、キャンプ場までの移動時間でお互いに打ち解けてしまえたことや、川遊び、飯盒炊爨(はんごうすいさん)、キャンプファイヤーは、私にとって日常生活とはかけ離れた別世界だった。

 集合場所は、当時キャンプ事業も持ち、主催していた全国紙展開の大手新聞社ビル前の一角だった。そのビルは、オフィスビルが立ち並ぶ繁華街の大通りに面した国際的な高級ホテルに隣接している。そんな繁華街のど真ん中から、大型バスで高速道路を使ってキャンプ場のある山へ移動するのは不思議な感じがした。舗装されていない道路を走るため、山の麓で乗り換えた小型バスに荷物とともにぎゅうぎゅう詰めで乗り込んで更に近くまで行き、車が入れない場所まで来ると、バスを降りて大荷物を背負ってみんなで山道を歩いてキャンプ場まで行った。移動には、集合から到着まで半日近くの時間を要するが、自己紹介や、ちょっとしたレクリエーションやキャンプで歌う歌をみんなで歌い、キャンプ場に着くまでにお互い早々に仲良くなってしまった。

 キャンプ場のある森は、青空から強い太陽の日差しが照り付けているのに、涼しい風が吹き抜け、気持ちが良かった。風に爽やかさを感じるのは、湿度が低いだけでなく、森の中の空気が澄んでいるからかもしれなかった。深いところでは背丈ほどもある水深の川には、底石がはっきりと見通せるほど透明な水が流れていた。早速仲良くなったグループの子ども達と一緒に川に入ると、学校のプールよりも冷たい水にすぐ身体が冷えてしまい、早々に川岸にあった大きな岩に上がり、ぶるぶると震えてしまった。

 森の木々の間からヒグラシの大合唱が聞こえ始めると、夕食準備の時間だ。グループごとに材料を受け取り、炊事担当、かまど担当に分かれてそれぞれ自分の役割に取り掛かった。私はかまど担当を選んだ。重たいアキスを握って薪を割り、かまどに薪を組み、薪割で作るおがくずとわずかな新聞紙に火をつけて、うちわで必死に仰いでかまどに空気を送り込むと、手は痺れ、顔には汗が滲み出てきた。そうしてようやく煮炊きできる火が燃え上がったのだった。炊事担当の仲間から飯盒や鍋を受け取り、火の番をしていると、冬にストーブの前にいる時のような暖かさで顔がポーっと赤くなり、頭もぼんやりとしてくるのが心地良かった。炊き上がったご飯は、自動で均一にすぐに炊ける自宅のものとは違い、少し焦げた固い部分とおかゆのように柔らかい部分が混ざり合っていて、食欲をそそるような香ばしさがあった。グループの仲間と一緒に手間暇をかけて作り、その日の出来事を話しながら食べる夕食は、とても美味しかった。

 夕食の片づけが終わると夜も更けてきて、他のグループの仲間達もだんだんと広場に集まってきた。カウンセラーさんたちがいつの間にか準備してくれた組み木から大きな炎が立ち上ると、その場にいる全員の心がひとつになったかのような歓声が夜空に響き渡った。ギターや手拍子に合わせて覚えた歌をみんなで歌ったり、グループごとに出し物をしたり、火の回りで踊ったりしていると楽しくて、気が付くと、もう寝る時間になってしまった。キャンプファイヤーの火を消して、みんなで最後に石と砂でごつごつした広場の地面に寝転ぶと、そこには満天の星空があった。昼間泳いだ川のように夜空を流れる天の川に、煌めく星が無数に広がっていた。その中でひときわ輝く『こと座』のベガ、天の川を挟んで反対に位置する『わし座』のアルタイル、そして『はくちょう座』のデネブが描く「夏の大三角形」がはっきりと見えた。夏休みになるとよく連れて行ってもらった科学館のプラネタリウムではなく、本物の降るような星空で「夏の三角形」を自分の眼で見つけた感動は、今でもはっきりと覚えている。

 これが数十年以上たった今でも鮮やかに思い出せる私の夏の自然体験だ。

 この夏、私の子どもは応募したキャンプ(私が参加したキャンプとは違う主催者によるもの)に抽選で当選し、親元を初めて離れて一人で参加する予定だ。私の子ども時代とは安全配慮も違い、まして今はコロナ禍で、当該キャンプは 3 年ぶりの開催で、参加者も主催者も参加日の前からしっかり準備し、感染予防対策もきちんとすることになっている。私が経験した自然体験と同じというわけにはいかないだろう。行動制限のないコロナ禍の夏は、それぞれがリスク認知をして行動決定する必要がある。立場や価値観によって行動選択は変わると私は思う。私が子どもをキャンプへ送り込む決断を下した背景には、子どもも身近な家族も全員が規定回数のワクチン接種済みだったことがある。しかしそれ以上に、子どもを参加させる大きな動機は、普段の生活では決して得られない自然体験が子どもの成長のきっかけとなり、心に残る貴重な思い出になることを願っているからなのだ。

(てんとうむし)

 

※子どものワクチン接種についての保護者向けの情報は、下記サイトが参考になります。

covnavi.jp