なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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Dance!

先日『ヒトラー~最期の12日間~』という映画を観た。
連合軍に包囲され、陥落間近のベルリン。
ヒトラーとその側近が司令部に籠るが、打つ手は何もない。
砲撃・爆撃が続きドイツの敗北は秒読み段階。
側近はヒトラー亡き後のドイツの敗戦処理に頭を悩ませている。
ただヒトラーのみがまだ戦える、逆転できると抵抗を試みる。空想の中。
あるドイツ将兵は、爆撃・砲撃で司令部も危ない状況がただ可笑しくてしょうがない。
場違いな笑い声が司令部で洩れる。いや実際この状況では笑うしかないのだろう。
「無条件降伏は認められない」全権を委譲されたドイツ将軍は連合国と交渉する。
しかし状況は変わらず責任をとって頭をピストルで撃ちぬく。
そんな中、50人くらいの政府・要人・秘書が一室に集まりレコードをかけ、踊り狂う。笑い声がその場を支配する。戦争、それも連合国兵士がいつこの場を制圧しに来るのかという状況を忘れたかのように。
しかし、直ぐ近くに着弾があり、灯りは消え建物は揺れる。
その場に居合わせた人はみな現実に呼び戻される。
けれどもある女性秘書は机に上り「ダンスよ!わたしはダンスがしたいの。続けましょう!」と叫ぶ。

敗戦国民それも旧政府の人間としてどんな扱いを受けるか分からない。
それは常に頭にある。
しかし、踊りたい。忘れたい。全てを。そうしなければ気がおかしくなってしまう。
人間として生まれた以上楽しまなければならない。笑っていたい。例のドイツ将兵じゃなくとも。極限まで張り詰めた精神は、楽しみ以外を欲しない。
これからやって来るドイツの将来は自分たちにとって...........いや考えるのはよそう。
考えなくとも通奏低音のように自分を捉えて離さない恐怖。

翻ってこの映画を観ている僕はどうだろう。
楽しんでいるか? 生を。
「Dance!」と場違いな、或いはそれ以外ないという叫びを上げたドイツ人の気持ちは分かる。よく。極限状態とは程遠い僕でも。
怒りと祈りと自己欺瞞と復讐心の入り混じった叫び。

「悪夢を見ていたと思っても、朝起きてもやっぱり何も変わっていないの。現実なの」
ひとりのドイツ人女性のことばも、僕とは遠いところにはない。

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