なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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『人生を狂わす名著50』――自分にとって読書とは?――

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この本は、京大院生でもある天狼院書店のスタッフが、「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本について書店のWebサイトに掲載した選書リストを基に編集されたブックガイドです。

オースティンの『高慢と偏見』、サリンジャーの『フラニーとズーイ』に始まり、太宰は『ヴィヨンの妻』、川端は『眠れる美女』を選ぶという偏向ぶり、最後は漱石の『こころ』からイシグロの『わたしを離さないで』へと至る怒涛のラインナップで、私は半分近く沼落ちした記憶があるので、読みながら一人で盛り上がっていました。

選書センスもさることながら、共感したのは序文です。

本を本気で好きになったら、バカな男に引っかかったバカな女になる(※あくまで比喩)可能性も増えるし、まっとうで快適な人生を手放す可能性が増えます。(中略)どんなにまともさを手放しても、人生狂っちゃうくらいのおもしろい本に出会えることは幸せなんだもの。

と筆者は書いています。

今、ネット上には「子供を本好きにするためには」「これを読むと○○がわかる」「東大生がおススメの本」といった記事が溢れています。こういう記事を見ると、本って賢くなるために読むものなの?という疑問が湧いてきます。

結果的に人生が豊かになるかもしれませんが、そこに至る道程は、この沼にハマってはいけないと思いながらハマっていく、数多の沼を乗り越えるのは新しい沼にハマるためなのではと思うような不毛な戦いの末、意外な眺望が開けていく繰り返しです。より深く沼にハマるためには知識の集積と修練が必要だとは思いますが。

しかし、年を取るとそのような沼落ちをすることも少なくなりました。一番の敵は老眼の進行です。小さい字を追うことによる疲労が集中力を著しく低下させるという現実を、若い頃は想像もできませんでした。でも集中力低下の原因はそれだけではありません。読み始めたら止まらずに朝を迎えた、というような勢いがなくなってしまったのも哀しい現実です。この先人生を狂わす本に出会えるのかどうか怪しいものですが、年を重ねたなりの楽しみ方もあると信じて、本との戦いを続けていければいいと思っています。

(福)