なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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パリスの審判 --宿命付けられた滅びに向かって--

i3さんの「真・善・美」で触れられていた『不和の林檎 パリスの審判』、私はかつてルーベンスの『パリスの審判』を見て色々考えたことがあり、コメント欄に書いていたら長くなったのでこちらに書くことにしました。

「パリスの審判」は、ヘラ、アテナ、アフロディーテという3女神が、"最も美しい女神へ"と書かれた黄金の林檎を手にするのは自分こそ相応しいと、審判になったパリスに猛アピールするお話です。各々自分を選んでくれたら提供するものとして(ワイロみたいなものですね)、ヘラは富と権力、アテナは戦いにおける勝利、アフロディーテは絶世の美女を約束します。その中からパリスは絶世の美女を選ぶのですが、問題はこの後です。アフロディーテがパリスに差し出したのがスパルタ王の妻ヘレネだったため、あれやこれやでトロイア戦争へと突入し、パリスも命を落としてしまいます。

アフロディーテも何も人妻を差し出さなくても他に美女はいただろうにと突っ込みたくなりますが、このお話には前段があります。パリスの父王に占い師がパリスは不吉の子であると告げたため、パリスは牧童に身をやつしていた(元々は王子だったのですね)、つまり、パリスの滅びは最初から予定されていたのです。滅びが宿命だったからアフロディーテを選んだのか、他の選択肢を選んでいればどういう滅びが待っていたのか、想像は尽きません。絶世の美女と滅びは相性が良さそうに見えますが、富と権力を選んでも、戦いにおける勝利を選んでも、色々な滅びが考えられます。

随分前にこの画にまつわるお話を聞いた時、周りの友人知人に、自分が男だったらどれを選ぶか(滅びという前提はナシで)と聞いてみたことがありますが(絶世の美女を絶世の美男に変えて女性目線で選ぶ、というのも考えたのですが、どうもしっくりこないんですよね。何故なのでしょう……)、ヘラ(富と権力)を選ぶ人が多かったように記憶しています。戦いにおける勝利を選んだら富と権力も付いてくるのではという気もしますが、逆に富と権力があれば戦いを避けることができるかもしれません。どれを選んでどの因果関係を重視するか、組み合わせを考えるのも楽しいです。

無条件で、富と権力、戦いにおける勝利、絶世の美女から1つを選ぶとしたら、あなたはどれを選びますか? 滅びが宿命付けられているとしたら、その選択は変わるのでしょうか? 富や権力、勝利ではなく、美を選ぶ衝動は何なのか? 秋の夜長に考えてみてはどうでしょう。

ギリシャ神話は諸説あるので、違う説をご存じの方がいらしたら是非コメントを。

(福)