なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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諦めず、議論を尽くそう

私はあまり三島由紀夫に詳しくないのですが、印象に残ったエピソードがあったので、ここで紹介したいと思います。

彼は1969年、東大全共闘と討論を行ったそうです。当時の東大全共闘は血気盛んで、なかでも機動隊と衝突した東大安田講堂事件は有名ですよね。三島由紀夫との討論会は、そのあと5月13日に開かれました。

企画したのは、当時全共闘だった木村修さん。三島由紀夫全共闘は、言ってみれば保守と革新。思想的には相容れない相手に対し、半信半疑のまま討論を提案したわけです。しかし三島由紀夫は、この提案を聞いて「行きましょう」と快諾しました。

会場だった駒場キャンパス900番教室には、1000人を超える学生が集まりました。そこに現れた三島由紀夫は、学生が投げかけるさまざまな質問に対し、誠実に応えていったとのこと。そして最後に、次のように話したそうです。

「私は諸君の熱情は信じます。これだけは信じます。ほかのものは一切信じないとしても、これだけは信じるということはわかっていただきたい」(「美と共同体と東大闘争」三島由紀夫・東大全共闘より)

この言葉を聞いた木村さんは、「最後の『諸君の熱情は信じる』という言葉。右とか左とか表面上はあったとしても、『根底まで考えろ』ということだと思う」と感じたとのことでした。

この「表面上(の違い)はあったとしても、根底まで考えろ」という言葉、今の私の心にズシッと響きました。

さまざまな課題に対し、立場によって意見が食い違ってくるのは当たり前。とはいえ、激しく攻撃し合っている様子は、見ていてあまり楽しいものではありません。

だからといって「相手の立場を考えろ」とか「立場を越えてフラットに考えてみれば」といって片付ければいいというものではない。たぶん、三島由紀夫がやろうとしていたのは、そういう「きれいごと」ではなかったのだろうと想像します。

「きっと、彼には彼の真実がある。そこを疑うことなく話を聞いてみよう。そして自分の意見も伝えてみよう。諦めず、とことんまで議論を尽くせば、お互いそれまで見えていなかったものが見えてくるのではないか」

私の想像に過ぎませんが、きっとそんな感じだったのではないでしょうか。

(真)