年が明けてから、心の平和を保つために平和な映画ばかり見ているが、その中で発見した掘り出し物をご紹介。
ファンタジーかと思いきや、なんと実話。(以下、ネタバレあり)
19世紀後半。フランスの田舎町に暮らす内気な郵便配達員シュヴァルは、配達の途中に石に躓いて転ぶ。この時躓いた石の造形が天啓をもたらし、建築の知識もないまま、彼は幼い娘のために『宮殿』を創り始める。素材は配達の途中で見つける自然の石たち。
ヘンテコな城などと村人から揶揄されながらも33年の月日をかけて、ぷちサグラダファミリアのような宮殿を彼は完成させる。毎日10時間32キロもの行程を歩いて手紙を配達するような過酷な労働をしながら、である。
しかも33年の間には、家族を失うような悲しい出来事もたくさんあり、その度に絶望の淵に追いやられ、死ぬほどの辛さをあじわいながらも彼は宮殿を創り続ける……。
寡黙で少し変わり者で、想いを口にすることが下手なシュヴァル。そんな彼の心の美しさを見抜き、彼を支え続ける妻。父親と、その宮殿を愛してくれる娘。でも彼らも……
主役のシュヴァル役の方をはじめ、俳優さんたちの繊細な演技・表情が非常に素晴らしく、映画をよりリアルなものにしている。
人生をかけて石ころを積み上げ宮殿を作る。
この行為になんの意味があるのだろう。
シュヴァルは多分なにも狙っていない。お金も賞賛も名誉もなにも。それでも創り続ける。
(後々、それらは勝手に付いてきたし、褒められればうれしそうだったけど。笑)
ただ、彼は天啓を受けたのだ。『宮殿を創る』という。彼はただ黙々と創り続ける。人からどう言われようと。ただ為すべきことを為す。澄んだ瞳のままで…。
人生の意味、使命。なにそれ?と思わせられる。
使命なんて知らなくても、意味なんてわからなくても、やらずにいられないことがある。
その結果、こんなにも美しいものが生まれることもある…。
・・・・・
本当にいい映画だった。
そうか……
『いい映画』とか『いいお話』と感じる時、それはすでに自分の心の中で肯定していることが表現されているからそう感じるのだな…。
私自身も、シュヴァルのように目の前のことにコツコツとただ取り組むのが好きだから。
(ikue)ゆる記事担当