なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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「地球は青かった」じゃなかった?

1961年4月12日、旧ソ連の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンは世界初の有人宇宙飛行に成功しました。その時語ったと言われる有名な言葉が「地球は青かった」。この言葉、実は本人が語ったのは「空は非常に暗かった。一方、地球は青みがかっていた」だったそうです。実際には、暗い宇宙にうっすら青みがかった地球がぼんやりと浮かんでいたのでしょう。今のようにSNSがあるわけではないのでどこでどう変わって伝わったのか不明ですが、母なる星地球は青く輝いていると人々は思いたかったのかもしれません。人は自分が望むものを記憶し、覚えやすいワンフレーズに飛びつく、様々な要素が結びついて「地球は青かった」になったのでしょうか。

日本以外では、この言葉よりも「ここに神は見当たらない」の方が有名だそうです。
ただし、これも本人が言ったものではなく、別の宇宙飛行士が伝聞として語った以下のアネクドート(小噺)を元に広まったとのことです。

総主教が訪ねた。「宇宙を飛んでいたとき、神の姿を見ただろうか」 
ガガーリン「見えませんでした」
総主教「わが息子よ、神の姿が見えなかったことは自分の胸だけに収めておくように」 
しばらくしてフルシチョフガガーリンに同じことを尋ねた。総主教との約束を思い出したガガーリンはさきほどとは違うことを答えた。 ガガーリン「見えました」 
フルシチョフ「同志よ、神の姿が見えたことは誰にもいわないように」
出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』 (2022/03/22 14:54 UTC 版)

よく出来たアネクドートだとは思いますが、そもそも神の存在が身近に感じられず、かつ宗教は麻薬だと言う指導者を持ったことがない日本人には響かなかったかも。
本当に「見えなかった」と言ったとしたら、それは「神がいない」という意味ではなく、宇宙に行っても尚見つけることができなかったと解釈したい気がします。

地球は青かった」という言葉で思い出すのがデヴィッド・ボウイのSpace Oddityという曲。
宇宙飛行士と管制塔のやり取りから始まるこのお話、トム少佐が乗ったロケット?が何らかのトラブルで軌道を外れ、管制塔からの通信も途絶え、最後は
Planet Earth is blue
And there's nothing I can do
というフレーズのリフレインで終わります。

この部分を聞いて、芥川龍之介の『或旧友へ送る手記』にある「自然の美しいのは僕の末期の目に映るからである」という一文を思い出しました(「末期」は「まつご」と読みます)。
制御を失い、管制塔からの通信も届かなくなって、やがて宇宙の塵となるべく真っ暗な空間を漂いながら、何もできることはない、その目に映る青さは怖いくらい美しいのではないかと。
その美しさを見てみたい気もしますが、自宅で衛星画像の地球を眺めながら「地球は青かった」という言葉に満足している方が平穏に暮らせそうです。


(福)