「これから4週間、私の母校であるこの自白小学校で実習生をすることになりました夢章ゆきえです。よろしくね！」
クラス担任の遠藤先生は「はい、みんなー。夢章せんせいの言う事をよく聞くんだよー」と通り一遍の紹介をして何やらこの実習生に説明をしていた。
物珍しさもあるのだろう。生徒たちは一々この学生を困らせる態度を取るようになった。
「夢章せんせい。ま、この子達も根は優しい子だからあんまり気にしないでねー」遠藤先生は相変わらず御座なりな言葉をかけて事務的な説明を続けていた。
事件が起きたのはそれから間もない２月17日の昼休み。
鍵がかかってる筈の屋上からの転落事故が発生した。救急車が間もなくその生徒を病院へと運ぶが、「あれは手遅れだよー」と目撃者。「俺も、落ちるとこ見た！」騒いでいるのは遠藤先生のクラスの男子たち。
事故で亡くなったのは5年2組の友引さゆり。友達の話ではバレンタインのチョコをクラスの男子に渡したのをからかわれたことで悩んでいたという。
罪盾みゆきは恐ろしさと罪悪感で苦しくなった。友引さゆりが誰にチョコを渡したのかを知っているのは、そのことで相談された自分以外にはいないのだ。友引は罪盾のことを一人だけ「ニーサ」と言って慕っていた。それなのに親身に相談に乗るフリをして、クラスの女子５、６人に「誰にも言っちゃだめだからね」という枕詞をつけてそのことをこっそり話してしまったのだ 。
それから自白小学校では異常事態が起き、保護者説明会が開かれる。1週間の間に5人の生徒が不慮の死を遂げたのだ。しかも皆5年2組遠藤先生のクラスの生徒。
罪盾みゆきは「次は私しかいない…………」「だって、あの亡くなった5人は私が噂を流した…………友引さゆりのチョコのこと、秘密を話してしまった生徒だもん」と震えながら喉を動かした。
その頃、学校では友引さゆりの幽霊を見たという噂が流れ、罪盾みゆきの不安に追い打ちをかけた。
一転、噂が終息したのは実習生の夢章が警察に逮捕されたからである。亡くなった5人を殺害したのは実は夢章だというのである。実習の授業のとき騒いで授業妨害をした生徒5人に恨みを抱いたらしい。
それから友引の幽霊を見たものは誰もいなくなったという。一番ほっとしたのは勿論罪盾みゆきである。「私、殺されずに済んだんだー！」昼休み、運動場の花壇に水をやりながら気の早いモンシロチョウがチューリップの周りを戯れるのを眺めていた。
背後で聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「ニーサ、元気そうね」
慌てて振り向く罪盾が見たものは…………
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