ある初冬の朝、私は名古屋に向かう新幹線に乗っていた。前泊しなくても間に合う時刻に仕事が始まるので、まだ暗い時間に家を出たのである。
京都駅から乗車したインド人らしき観光客グループが、私の隣に座った。彼らはしきりに車窓から見える景色を写真に収めている。人の行き来も戻りつつあるし、コロナ禍も先が見えてきた。そう思いながら、彼のスマホに導かれるように窓の外を眺めた。
その時、黄金に輝く朝日が目に入った。あぁ、1日が、始まる。私の中に高揚感が湧き上がってきた。
頭の中には昨日も明日もなく、反省も不安もない。ただ1日が始まることへの感動だけがあった。
この一瞬があるだけで、今日は良い一日になった。
(寺)