職場で野良ねこの世話をしている
エサをあげるからには、トイレを設置して、寝床も作ってある
保健所に登録し、避妊手術を施しているので
野良ねこの定義からは外れるのかもしれない
野良ねこにエサをあげることを肯定的に思っている
ねこが住めない町は人間にも冷たいと考えている
捨てられて野良になった原因は人間にあるのだから
その責任もまた人間が負うべきなんだろう
世話をしているねこCのところに
付近で暮らしているねこDが来るようになった
残念ながら友好的ではない
Dの方が強く、Cが追い払われてしまう可能性は高い
その場合のCの生存率は大幅に低下する
Dも人に慣れているので逃げる気配はない
ためらいはあるがDを追い払うことにする
命に価値を付けることを選ぶ
おそらく、Dの生存率は下がり
Cの生存率は大幅に上がるだろう
固く、冷たくなった体を抱きあげた時
わたしの手は
その塊りの
かつての暖かさを覚えていた
変わり果てた姿に目と知性は忌避するが
その感触の記憶に
後悔の意味を知る
命の価値は平等なのか
理想と行動が矛盾する
それでもつぎがあるならば
迷いもためらいも減るだろう
正しくないとしても
迷いやためらいがあったとしても
また選ぶのだと思う
手に残る記憶は
無為でいることなどゆるしてはくれない
(からす)
