欲望を満たすために、肉体があるのだろうか。若い頃は、そう考えるほうが自然だったかもしれない。際限なく欲望を追い続けるだけの体力、エネルギーがあった。
ところが、年齢を重ねるたびに身体にお伺いをたてることが増えてきた。今やバイキング形式の食事はあまり嬉しくないし、楽しい予定も詰め込みすぎると、帯状疱疹や腰痛が心配だ。
なんでも手当たり次第食べていた暮らしから、自分に合ったものを選んで適量食べる暮らしに移行しつつある、ということか。これより先は、空想だけで満たされる年代に突入かもしれない。霞で満腹になれば経済的だし、環境にも優しそうではある。
その実、欲望と肉体の関係のバランスが取れている間は、大きくても小さくてもいいのかもしれない。そのバランスが崩れた時こそが、苦しいように感じる。欲が先に枯れればエネルギー不足、欲だけ残れば亡者の苦しみではないのか。
何事もバランスがいいに越したことはないが、現実は破綻しない程度の±波形を描くようにできているような気がしている。まったく気力のわかない日があったり、遊び呆けて終電を逃したり。それが人というものなのだろう。
（MK）
