なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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『スーパームーン』という幻想

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名古屋市科学館には、小学5・6年生が参加する「サイエンスクラブ」がある。そこで、親子でオンライン参加する観望天体が開催された。2023年8月は年内で月が地球に最も近づく満月が見られる時期で、テーマは月についてだった。そこで聞いた話のなかで特に意外だったのは、科学館や国立天文台ではその満月のことを「スーパームーン」とは言わない、ということだった。
「詳しいことは科学館のプラネタリウムでも話しますので、ぜひお越しください」
オンライン・サイエンスクラブでそう言われたので、後日、子どもたちと一緒に科学館のプラネタリウムにも足を運び、さらに詳しい解説を聴いた(科学館のHPにも同じ解説がある※)。

月が地球の周りを回る軌道は楕円軌道で、地球に最も近い満月と最も遠い満月では、約50,000kmの差しかなく、実際その二つの月の大きさを地球から観測すると、最も近い満月は平均値としての満月の1.14倍の大きさに過ぎないとのことだった。
約50,000kmと聞くと、大きな差に感じるかもしれない。しかし、ここで比較しているのは、地球に最も近い月の35万6,400kmと、最も遠い月の40万6,700kmだ。この比率を別のものに置き換えると、500円玉が地球に最も近い距離にある時の月で、10円玉が地球から最も遠い距離にある時の月だ。客観的に見える月の大きさは、それくらいの大きさの差でしかない。
それなのに、人は心理学的効果(錯視)によってその大きさを3-4倍も大きく感じるというのだから驚いた。それを確かめる方法を教えて頂いたので、プラネタリウムでやってみたが、意外にも小さくて更に驚いた。実際の空でやってみたら、もっとビックリするに違いない。

ところでみなさんは、腕をいっぱいに伸ばした時の手の形と満月のみかけの大きさを比較した時、どのくらいだと思うだろうか?

1. 小指の爪で隠れる
2. 親指の爪で隠れる
3. げんこつで隠れる

1.の”小指で隠れる”が正解だ。
私は自分がイメージしている大きさの方を、実際よりもずいぶん大きく認識していた。特に、昇ったばかりの月や低空にある時の月はこの効果が大きく(地平効果)、普段の何倍も大きく感じるのだそうだ。それを言葉では、「スーパームーン」と表現する。「スーパー」、「ウルトラ」、「エクストラ」など強い印象の言葉は錯覚を起こしやすい。 実際そう見えるのだから、そう言語表現する方が共感も得やすいのだろう。
しかし、観測して映された写真を見ると、そうではないことがはっきりとわかる。理由は簡単。観測機器は人間の脳のように解釈したり感動したりはせず、機械的にあるがままの状態を映し出すからだ。科学的に(観測上)、自分の見ているものを脳が解釈・判断した幻想だとわかったとしても、それでも普段よりも何倍にも大きく認識してしまうのが人間なのか、と私は改めて思い知った。

2023年9月29日(金)は中秋の名月だ。あなたは、空を見上げた時、その幻想的な月に感動するかもしれない。 しかし、その月を別の視点から見られると、また違った側面にも気づくことができるかもしれない。

(てんとうむし)

http://www.ncsm.city.nagoya.jp/study/astro/astro_news/big_moon_2023.html