2023年2月19日まで、上野・科学博物館で「毒展」が開催されています。「毒」は危険なものですが、どこか魅惑的でもあります。好奇心をそそられて、見に行ってきました。
会場をぐるりと一回りすると、だいたい40分。考えてみれば当たり前のことですが、毒展だからといって、毒に触ったり食べたりできるはずはありません。期待していたようなスリルを味わうことなく、ただ平和にガラスケースに収められた押し花や剥製を見て歩くだけ。正直、ちょっと物足りなく感じました。
ここで「毒」についてちょっと考えてみましょう。果たして「毒」とはなんなのか? 毒展における毒の定義は「ヒトを含む生物に害を与える物質」でした。そのため、展示物の中にはブドウやニンニク、マグロもありました。しかし一般的に、これらは毒と考えられませんね。
毒展で購入した図録を見てみると、パラケルススの「あらゆる物質は毒である。毒になるか薬になるかは容量によるのだ」という言葉が記載されていました。さらに巻末に「毒は相対的なものである」とも書かれています。とすると、「毒」は人によって違うということになりますね。
そこで次に考えたのは、私にとってなにが毒なのだろう、ということ。たとえば、読書。私は本を読むのが好きで、寝る前に好きな本を読む楽しみは、ほかの何にも代えがたいと思っています。とはいえ、あまりおもしろい本を読んでしまうと、頭が興奮して眠れなくなってしまいます。寝る前に読む本は、あまり面白すぎるものであってはいけません。とすると、面白い本は私にとって毒なのでしょうか?
おもしろいもの、魅力的なものは、ほかにもたくさんあります。こういったものは私に生きるエネルギーを与えますが、うっかり摂取しすぎると中毒・依存症気味になり、生活に支障をきたす可能性も。これぞまさに「毒になるか薬になるかは容量による」というパラケルススの言葉通り。毒にやられないよう、気をつけて楽しまねばなりません。
さて、あなたにとっての毒は何でしょうか?
(真花)