2月はほとんど旅をしていて、自宅にいたのは6日間だけ。たまに帰ってくると、家のありがたさが身に染みます。
しかし贅沢な環境にはすぐに慣れるもので、旅から帰った直後は「水がいくらでも使える!」「お風呂がいつでも入れる!」と喜んでいたのに、今やそれが当たり前になってきています。
家だとこんなに便利なのに、なぜ私たちはわざわざ不便な環境に耐えながら車のなかで仕事をしているんでしょうか。以前、台湾料理店で友人と食事しながら、彼にそんな問いかけをしてみました。すると彼は、こう言いました。
「だって楽しいじゃないですか。会社勤務だと土日しか休めないから、あまり遠くには行けません。でもマイカさんは職場ごと移動できるんだから、仕事をしながら行きたいところに移動し、休日にはそこで遊べるんでしょう。いいなあ」
確かに、それはあります。会社を設立して21年、いつも仕事を優先していたので、長期休暇を取る暇はなく、旅行に行こうなんて思いつきもしませんでした。
仕事の優先順位に関しては今も変わっていません。変わったのは「仕事をする場所をどこにするか」ということだけ。職場を固定しなければならないという固定概念を捨て、職場を動かしてもいいという考えに変えただけで、長年諦めていた旅行ができるようになりました。
たとえば「どうしても北海道に行きたい!」と思ったら、明日から出発してもいいんです。そのために長期休暇を取る必要はありません。仕事をしながら少しずつ北海道に向けて進んでいけば、いつかは……たぶん1週間ぐらいあれば……北海道にたどり着けるでしょう。
さらに彼は、こんなことも言いました。
「それに、場所が変われば仕事の内容も変わるかもしれないじゃないですか。今度、恐山で原稿書いてみてくださいよ」
恐山で執筆……! それはちょっとシュールだけど、確かにちょっと興味があります。私が書く文章はエッセイや小説ではないので、さほど影響を受けることはないと思いますが、もしかすると少しだけ恐山フレーバーが漂う原稿になるかもしれません。
(真)