「no art no life」 というNHKの番組がある。
説明には、このように書かれている。
「日本各地の“表現せずにいられない”アーティストを紹介する番組」
この番組を見る度に「生きている」とはどういうことか、と考えさせられる。
最近放送された、前田康宏さんもその一人。
五十一歳の彼には軽い知的障害があり、福祉施設の美術部に月に三回参加して絵を描いている。
その絵はかなりのレベルなので、施設からは毎日絵だけ描いていてもいいよと言われているのだが、彼はそれを拒み、週五回きちんと施設で仕事をする。
清掃の仕事だ。丁寧にトイレの掃除をする彼の姿が映る。
きれいになるのが好き、そして、なんでも勉強になると言う。母にそう教わったと。
彼が掃除したトイレはぴかぴかだ。
彼が描く絵にも光があふれている。
微笑む。 絵を描く。 掃除をする。
前田さんは「生きている」。
とてもシンプルに、生の本質を生きている。
そう書きながら、「生の本質」ってなんだろう、と思う。
なぜ彼を見て「生きている」と感じるのだろう。
神さまみたいだなぁ、とも思う。
無邪気な神さまがそのまま、彼という皮をかぶって、掃除をして絵を描いて笑っているように見える。
生の本質は「喜び」だ。
彼の姿からそれがあふれているから
呼応して私の目からも涙があふれる。
(ikue)