なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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上手い喧嘩、下手な喧嘩

1.喧嘩には2種類ある

 

 喧嘩という言葉を聞くと、どのようなイメージを持つだろう?

 6月に参加したおなごテツのテーマは、「上手い喧嘩、下手な喧嘩」だった。世の中には、「喧嘩をしたことがない人」、「喧嘩ができない人」、「喧嘩から逃げる人」もいる。その背景は様々で、それらの意見や経験のシェアから、改めて考えてみた。

 

 私にとって印象的だったのは、そもそも喧嘩には「征服したいがための喧嘩」と「分かり合いたいがための喧嘩」の大きく分けて2種類がある、という意見だった。

 私は、この二種類の喧嘩について、上手い喧嘩に転換する方法はあるのだろうか?ということを考えてみた。私が考える上手い喧嘩とは、“お互いに、もしくは相手に、考えさせるきっかけを与えるもの”であり、“相手との関係性を見極めた上で、冷静に対応を考え選んで行うもの”だ。いくつかのスキルを使えば、下手な喧嘩から上手い喧嘩への転換は可能なのではないか、と私は思った。

 その理由は、以下の通り。

1)感情に巻き込まれないように、相手と距離を置くことはできる

2)自分が冷静になるためのスキルを学び、身に着け、使うことによって、自分自身の爆発的な感情の発露をコントロールし、相手が受け入れやすいように自分の考えを自分の感情とともに伝えることはできる

3)感情的になっている相手を冷静にさせるためのスキルもあり、冷静な話し合いに転換することはできる

 いずれにせよ、キーワードは「冷静さ」である。

 

2.相手から仕掛けられる感情に巻き込まれないために

 

 「征服させるための喧嘩」は、例えば、仕掛ける側が相手に悪意をぶつけるような表現で始まり、いかに自分が相手よりも上であるかをアピールする(いわゆるマウントを取る)ことが目的になっている。その人は、日常生活の中で満たされていなかったり、大きなストレスを抱えていたり、といったその人自身の人生の課題が背景に隠れている場合がある。いかにも相手に非があるという表現で、相手の罪悪感を刺激することが多いような気もするが、実のところ喧嘩を仕掛ける側は「喧嘩」という形で自分自身のストレス解消をしているのだ。

 しかし、こういった行動は、良好な人間関係を簡単に破壊するだろう。賢い対処法として出された意見は、「敢えて、その相手にマウントを取らせてあげる」というものだ。そういった関わり方しかできない人には、さっさとその目的を達成させてあげて、深く関わることを避ける。つまり、そのような喧嘩を仕掛ける人というのは、人間関係を深めるに値しない人なのだろう。

 何のための喧嘩なのかという「目的」を考えると、意味のある喧嘩なのか、それとも消耗するだけの喧嘩なのかが判断できるのではないだろうか。たとえ「征服したいがための喧嘩」に巻き込まれたとしても、対応によっては「上手い喧嘩」へ転換できる可能性がある。

 もし自分がそのような喧嘩をしている側であるならば、まず、不快な感情を誰かにぶつけ攻撃したり、貶めたりすることは、自分の抱える問題解決には繋がらないと知る必要があるだろう。本来の問題に目を向け、どんなことができるか考え、行動を起こす方が、その人の人生は豊かになるのではないか、と私は思う。

 

3.自分自身の感情を落ち着かせ、気持ちを言葉で冷静に相手に伝える

 

 一方で、「分かり合うための喧嘩」は、感情をコントロールすることによって、「冷静な話し合い」へ転換できる。お互いの違いをお互いに認め合う、そして関係性を前へ進めることもできる。

 まず、自分自身が怒って喧嘩をしている場合を考えてみる。自分の爆発的な感情の発露をコントロールするために、私は2つのスキルを紹介したい。一つはanger management(怒りのコントロール)、もう一つはassertive communication(自他ともに尊重した自己表現)だ。

 そもそも喧嘩では、怒りの感情をそのままぶつけ合っていることが多い。しかし怒りという感情は二次感情で、不安、心配、悲しみ、寂しさ、落胆、恐怖、などのネガティブで不快な一次感情から来ている。その一次感情に自分で気づいてコントールできるかが鍵である。怒りを感じる自分がいる一方で、別の視点で(メタ認知によって)怒りが生じるまでのプロセスを理解する。そのプロセスには5段階あり、場面や相手の言動によってある出来事が起き(第1段階)、出来事に意味づけをし(第2段階)、自分自身のマイルール(自分の中での常識)や期待していたことと違うことが起こったと認識して(第3段階)、一次感情(怒りになる前の感情:裏感情)が発生し(第4段階)、二次感情の「怒り」に発展(第5段階)する。第1→5段階まで無意識で行っていることが多いため、気づけるように意識することが重要である。気づけるようになるには意識的な訓練が必要で、第5→1段階と気づくものの、難易度もその順で上がる。まず、第4段階に気づこう、という話だ。次は、第3段階の自分の常識を疑う。つまり起こった出来事に対して別の解釈ができないか、自分の考えを修正するのだ(起きたことを再評価して、別の感情を得る)。私を怒らせているのは、本当は私自身であり、「私自身が出来事をどう捉えるか(物事の解釈の仕方)」によって変わってくる。その怒りを大きくしているのは「私の思考・考え」だからだ。

 冷静になるためにその場を一時的に離れるのも有効である。怒りの感情の持続時間は実は短い。ゆっくりと深呼吸を10回ほどしている間に、怒りの感情は自分の中を通り過ぎていく。落ち着いたら、自分に起こったことを見つめ直し、もう一度相手と向き合えばいいのだ。

 

 そして、自分の感情が理解できたら、自分を主語にして相手に自分の考えや気持ちを率直に表現・主張しつつも、同時に相手の主張や立場を尊重した対等なコミュニケーションを心がける(assertive communication)。例えば、「あなたは何回言ったらわかるの?!ここを片付けてちょうだい!」というのは、あなた(YOU message)を主語にした伝え方である。同じことを言うのに、「私はあなたがおもちゃを片付けてくれると、お部屋がきれいになって、とても気持ちがいい」というのは私(I)を主語にした伝え方(I message)で、なおかつ相手を攻撃しない。このようにどんな事実(出来事)が、どんな影響(反応)をもたらし、私はどんな気持ちなったのかを「私は○○と感じています」と自分の気持ちを相手に伝える言い方で自己主張し、なおかつ相手が傷つかない言い方に変えるのだ。このように自分の気持ちを相手に率直に伝えながら、冷静な話し合いに持っていくことは可能である。

 

 またこれは、自分の気持ちを相手に伝えられず、我慢しがちな人にもおすすめだ。我慢には限界があり、不満が溜まれば、感情が爆発するリスクもある上、人間関係を壊しやすい。対等で良好な人間関係構築のためにも、普段から自分の考えや気持ちを適切に主張することは意義があるからだ。

 私は第二子が0歳児の頃、育児で良好な親子関係を築くために、当時住んでいた地域の育児講座で学んだが、職場で上司が部下に、また部下が上司に対して意識的に行うコミュニケーションとしてもこの2つのスキルは有効だと思う。ただ、これは理解できても実践するのは難しく、日々のトレーニングが必要だ。私自身もうまくいく日もあれば、うまくいかない日もある。大事なことは、少しでも意識して努力を継続し、スムーズにできるようにしていくことだと私は考えている。

 

4.相手の話を傾聴し、深く理解するために質問をする

 

 逆に怒り狂っているような相手に冷静になってもらうためにできることは何だろう?出された意見は2つあった。一つは忍耐強く相手の話に耳を傾けること(傾聴する力)、もう一つは相手をより理解するために質問を投げかけること(質問力)だった。

 傾聴のスキルもあちこちで紹介されていると思うが、ポイントは自分の意見を挟まないことである。ひたすら相手の話を聴く。これはクレーム対応の一つのスキルでもあるが、不満を言いたいだけの人であれば、言い尽くして終わるだろう。おなごテツでは、ゴット・ファーザーの原作本での、“激昂している相手の話をドン・コルレオーネが8時間近く聞き、その後突然席を立ったら相手が驚いてしまった”という場面が紹介された。ドン・コルオーネの忍耐強さに私は驚いたが、相手に言いたいだけ言わせて、結果的に自分の良い方向へ誘導するのも、上手い喧嘩と言えるのだろう。

 また、相手の話に関心を持って聴いていれば、相手の話をより深く理解するために、自分にはわからない部分を相手に質問することがある。質問力によっては、相手を冷静にさせることができ、相互理解にも役立つ。相手の「わかってほしい」という欲求が満たされるのは相手の気持ちに寄り添った対応でもあり、投げかけられた質問を相手が考えることによって、冷静さを取り戻すこともあるのではないだろうか。それは冷静な話し合いへ転換する可能性がある上手い喧嘩だと私は思う。

 

5.下手な喧嘩から上手い喧嘩へ

 

 感情的な喧嘩は、感情の大きなエネルギーを発散させる一時的なメリットがあるのかもしれない。しかし、その勢いが強すぎれば、相手を傷つけるだけでなく、自分の心身も損なうリスクや、後の人間関係に悪影響を与えるリスクがある。これは下手な喧嘩なのではないだろうか。

 感情的なやり取りとしての喧嘩から、冷静な話し合いに転換できれば、感情面も含めてお互いを深く理解し、絆が深まるのに役立つ可能性がある。喧嘩に対するスタンスは、真正面から相手と同じように感情的に対峙するだけでなく、逃げることや、相手にしない方法もある。いくつかのスキルを使えば、自分が冷静になったり、相手を冷静にさせたりすることもでき、お互いにとって良い対応を選択することもできるだろう。ここにないものも含めやり方は様々あるが、下手な喧嘩から、上手い喧嘩への転換は可能なのではないか、と私は思った。

(てんとうむし)

参考:おなごテツ:2022年6月25日(土)発言録