お盆を過ぎると、多少暑さも和らぎますが、暑い季節には見たい絵画も、てんこ盛りの西洋絵画よりは、余白の多い日本画にシフトしていきます。夏に想いだす日本画の筆頭が、トーハク所蔵、久隅守景の「夕顔棚納涼図屏風」です。
描かれているのは、夏の夕方に、あまり立派とはいえない家の軒先の夕顔の棚の下で、のんびりとくつろぐ家族の姿。空にはぼんやりと現れた月。それだけなのですが、見た途端に、そこで寝転びたい誘惑に駆られます。
描かれている簡素な世界は、物質的な豊かさの対局にありながら、幸福感に満ちています。言葉で語ろうとすると、どれだけの文字を操っても伝わりづらい、人にとっての心の充足、幸せとは何かを、少ない線でほんわりと伝えてくれています。
技術的なことはさておき、最小の手数で(画家がそれを可能にするために、限りない時間が、費やされたのだと思いますが)最大の効果を、あまりにさり気なく表現しているところが、この作品が人を惹きつけてやまない肝であり、国宝たらしめている理由の一つなのでは、と思います。
今後日本の夏をエコに、ストレスを少しでも少なく過ごすには、休日を増やして、夕顔棚もどきスペースを各地に増やすというのも、ありなのかもしれません。少しでも夏に涼みたい!と感じたら、お試しにググってみてください。
(MK)