なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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無限消費、ふたたび

 前稿でかなりラフな未来スケッチを描いたが、ラフ過ぎた。コンピュータの性能が『ムーアの法則』なるものに則り、爆発的に高性能になってゆくのは良い。しかし、人間の脳をスキャンして、その情報をコンピュータに入れ、本物と違わぬ〈電-脳〉を作る技術は2045年になっても成功していないだろう。

 でも、それをクリアーしたとする。だが、その〈電-脳〉が日常生活を送るための、この世界の実環境をスキャンした、〈電-環境〉も必要となる。そしてそれは、どこまで細部を読み込んだものにするかが問題になる。原子レベルまでなのか。不確定性原理がはたらく中で。

 更にそれらを含めた〈電-世界〉が従うべき物理法則をコンピュータに入力しなければならない。この我々の物理法則-物理現象というのは、人類によるその解明が、常に現在進行形で進んでおり、2045年だろうと2445年だろうと「すべての物理を解明した!」というゴールに達することはないだろう。それなのに物理法則-物理現象をコンピュータにすべて完璧に入力していかなければ、〈実-世界〉と〈電-世界〉の乖離が進んでしまう。

 換言するなら、今この〈実-世界〉に存在する〈謎〉(問題)と、その〈答え〉を現在の科学力で解き、すべてコンピュータに入力しなければならない、ということだ。
だが、〈答え〉が分からないからこそ〈謎〉なのである。よって上述の入力には原理的矛盾が含まれる。畢竟〈電-世界〉創造構想は挫折する。或いは、かなり見劣りのする〈電-世界〉しか人間には作り得ない。

 それでもいいから、〈電-世界〉に引きこもって毎日を過ごす〈電-脳〉という存在に成ったとしよう。

 個人個人は銘々好きなパラメータを選ぶことによって、次のような世界で生きることが出来る。《重力の無い世界》《皆が北斗神拳を使う世界》《確率99%でナンパが成功する世界》《他人の心が読める世界》《自分が世界の支配者となる世界》《あらゆる犯罪の無い世界》etc.

 その各々の《世界》で他のパラメータの《世界》の人と交流無しに、神のごとく生きることも、他のパラメータを選んだ人との交流の有る世界で生きるのも、どちらでも選べる。好きなものに囲まれた前者の世界で生きる限り、何の倫理も必要ないと思う。
後者において、例えば自分は《争いの無い世界》に生きているとし、他者の例えば《皆が北斗神拳を使う世界》の住人と交流する際に、問題が発生する。交流する世界では果たしてどちらのパラメータが優先されるのか。

 意外なところで倫理が必要となった。倫理は他者と、正確に言えば自分が神として通用しないところの他者と、接触する際に必須となる。《世界》調整のために。
そこまで面倒くさいことをして他の《世界》の住人と交わるくらいなら、自分の〈夢〉の中で、コンピュータが創ってくれる人々の中で生きる方が楽だ。つまり自分の選んだパラメータの《世界》に閉じこもり生きるのだ。こうして倫理は衰退してゆく。実際問題として。

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