時折ページをめくる本がある。
詩人、長田弘氏の「世界はうつくしいと」という詩集。
ここに引用することができなくてざんねんだけれど、手にとってページをめくると呼吸が整う。ホッとする。
自分の中心に戻る感じがする。
なんでもない日常こそが、価値あるものだと再認識できる。
うつくしいものを、うつくしいと言っていい、と。
あたりまえのことなのに
忘れがちなこと。
なにも特別なことはない、静かな日々が連なっていくことが大切。
ニュースで取り上げられるような出来事は、庶民のささやかな暮らしの中で起きた「異常な出来事」でしかない。
人の身体でいえばガンのようなものかもしれない…。
大多数の細胞たちは、その人を生かそうと、静かに、やるべきことをしている。
大多数の庶民たちも、命を全うするために、静かに、やるべきことをしている。
誰から褒められるのでもなく、淡々と、ごくふつうのことを。
その生き方が、うつくしい世界をつくる。
世界がうつくしいのは、それぞれが、それぞれの「命」を全うしているから。
そしてもちろん、全ての人、全ての命に、その生を全うする権利がある。
ある命を支えるために他の命をいただくことはある。
けれどそれは自然の成り立ちの中でゆるされることだけ。
もう間もなく桜が咲く。
世界はうつくしい、と教えてくれるのはいつも自然だ。
「世界はうつくしい」、と
世界中の人が確信をもってそうつぶやく時、世界は変わるのではないか、と夢想してみる。
(ikue)