久しぶりにタイに出張する機会を得た。海外出張はこれが最後になるかもしれないという気持ちもあり、そういう意味では一つの節目になるかもしれないという言葉にできない感情が湧いてくる。
しかし現地に着けば、そのようなことはすっかり忘れて過ごしていた。今回は、時節柄、時間外のお付き合いを控えたわけであるが、そうなると一人で食べる夕食は駐在員対象のホテルでの鮭定食８００円相当になる。食事に関しては日本と味も値段も同じである。しかし、ホテルを出て歩き始めると、そこは猥雑という言葉が似合う活気と独特の匂いに溢れた街並みに変わる。
歩道の段差が大きいことが印象に残っている。日本では、ベビーカーや車いすが通りやすいように歩道の端は段差が低くなっている。しかしタイでは、しっかりとしたブロックで段差が設けられている。車道を渡る時、まず視線が変わるぐらい下がって、また上がる。
なぜ、こんなことが心に残るのか。年齢の影響で足の力が落ちているのかもしれない。この体験を通じて、日本で段差解消に取り組んでこられた方の長年の努力に改めて感謝する気持ちが生まれた。
（寺）
