なごテツ世話人&ファンのつぶやき

「なごテツ」の世話人およびファン倶楽部のメンバーによる個人的なつぶやきブログ。なお、ここに書かれているのはあくまでも個人の意見で、「なごテツ」の意見ではありません。

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オリジナリティーとは(村上春樹『職業としての小説家』)

今、村上春樹さんの『職業としての小説家』を読んでいます。
「おぉ!」と感じることが全編にきらきらと散りばめられている本なのですが、その中のひとつが、【オリジナリティー】についてでした。
まず村上さん自身は、小説家として以下の三つの条件が、オリジナルであることの基本条件だと書かれています(簡略化して引用)。

【他の人とは明らかに異なる独自のスタイル】

【そのスタイルを自分の力でヴァージョンアップできる】

【そのスタイルは時間とともにスタンダード化し、後世の表現者の豊かな引用源となる】

二番目と三番目はさすがベテラン小説家の実感から生まれた定義…。
そのあと、村上さんは『オリジナリティー』を語る際に、自身が十代初めにビートルズを聴いた時の感覚を書かれています。

…僕の魂の新しい窓を開き、その窓からこれまでにない新しい空気が吹き込んできます。そこにあるのは幸福な、そしてどこまでも自然な高揚感です。いろんな現実の制約から解き放たれ、自分の身体が地上から数センチだけ浮き上がっているような気がします。それが僕にとっての『オリジナリティー』というもののあるべき姿です。とても単純に。

そして、デビュー当時のビートルズについて『ニューヨークタイムズ』誌に書かれていたシンプルな言葉を、オリジナリティーのいちばんわかりやすい定義の例として示しています。↓

『彼らの創り出すサウンドは新鮮で、エネルギーに満ちて、そして間違いなく彼ら自身のものだった』

そして最後にはこう書かれています。

オリジナリティーとは何か、言葉を用いて定義するのはとてもむずかしいけれど、それがもたらす心的状態を描写し、再現することは可能です。そして僕はできることなら小説を書くことによって、そのような『心的状態』を自分の中にもう一度立ち上げてみたいといつも思っています。なぜならそれは実に素晴らしい心持ちであるからです。今日という一日の中に、もうひとつ別の新しい一日が生じたような、そんなすがすがしい気持ちがします。

…オリジナリティーとはなにか?
村上さんの書かれたものを読んで、私のオリジナリティーについての認識が変わりました。
今さら本当にオリジナルなものなんて生み出すことができるのか…なんて思っていましたが、そういうことだけではないんですね。
ここに書かれているような、新鮮で清々しくエネルギーに満ちた感覚なら、おそらく誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。
小説とか絵とか芸術的なものに限らず、日常のささやかな事柄においても、こういう感覚は得られる…。
オリジナリティーとは、何かを表現しようと意図しなくても、その人がその人らしく生き生きとしているところにコンコンと湧き出る、命そのもののような気がします。
だからこそ、そこには楽しさやわくわくがあるんですね…(*´ω`*)

(ikue)