傘寿を過ぎて入院した叔母のお見舞いにいった。叔母はいわゆる器量よしタイプではないのだか、その日の叔母は、私が見たどの年代の叔母よりも美しく穏やかにみえた。思いの外元気そうであったのに加え、私にはそのことが嬉しかった。
年齢を重ねつつ、人は持って生まれた顔の上に、その嗜好や生活を上乗せしていくように思う。いわば表情、風情、風貌、オーラのようなものだろうか。内面のあるものが、はっきりとその人の軸になった時、容姿を上回り、表に溢れ出るのではないだろうか。また高齢になるほど身体は脆い容器のようになり、内面が表に現れやすいように感じる。もう取り繕う必要がないということかもしれない。
顔を見ただけで職業を連想させる人。とても裕福そうなのに、エゴイスティックさが現れている人。強い信念を持っている人。迷いの多い人。道を聞きたくなる柔和な人。
自分で操作できるものではないが、人は一人では生きていくことも死んでいくこともできない。年をとった時、ハリネズミみたいでないほうが、お世話になりやすいよな、と思ったりしている。
(MK)